私が以前勤務していた職場での実体験です。
新たな資格を取得したため、かねてより希望していた部署へと異動が決まりました。
その部署は少人数ですが、それまでいた部署よりも自由度が高く、
自分のペースで仕事を進めることが出来るためとても恵まれた環境だと思っていました。
さらに昇格しての異動となったため期待に胸をふくらませていました。
私を同じタイミングで後輩も異動となったのですが、
この後輩はいわゆる縁故による入職で、会社経営層の幹部職員の息子でした。
いわゆる個人経営の会社であったため、他の従業員も後輩が縁故入社なのを知っています。
あからさまにゴマをする職員、陰で批判的な発言をする職員などいましたが、
私は年齢が近かったことや幹部職員から「悪いけど息子の面倒もみてやってくれ」と言われていた手前、
そのどちらの立場にも属さない位置にいました。
仕事の能力が低いとか、素行や発言が悪いとかではなく、
むしろ後輩は責任感も強く、何事も集中して掘り下げて仕事を進めていく性格でした。
縁故入社であるということを自ら自覚していたこともあるが故だと思います。
後輩の行動に変化が見られたのは異動から6か月くらいした頃です。
後輩が作業の手を止め、突然机に突っ伏してしまいました。
最初は夜更かしでもして眠いのか?と思ったのですが、
しばらくすると鼻をすする音が、よく見ると肩も震えています。
心配になりどうしたのか聞いてみても「大丈夫です。すいません」との返答が返ってくるのみ。
しばらくすると席を立ち、15分くらいして戻ってきてまた作業を開始していました。
次の日、後輩は仕事を休み、出勤しては休みを繰り返すようになりました。
翌月、上司に呼び出され後輩の最近の様子について聞かれました。
仕事量、職場内の環境、人間関係などを聞かれ、私の知りうる範囲で答えました。
上司からは心療内科を受診した結果「うつ病」と診断された。
ということでしばらくの間休ませるとのこと。
その間の作業はみんなで分担してくれと言われました。
4週間の休職後、後輩は戻ってきたのですが、明らかに雰囲気が変わっていました。
不眠による影響か、目に覇気は無く、出勤時の服装についても
シワのままのYシャツやベルトを締め忘れていたり。と変わってしまいました。
知人にも聞いてみた結果、職場内で「がんばれ」とか「早く良くなって」と言った声掛けはしない。
それ以外は今までと変わらずに接する。
もし後輩に業務を任せなければならない時には私に相談してからにする。
というルールを決め、後輩には体調に合わせて出来る業務からやっていこう。
とだけ伝えました。
担当していた業務を整理し直し、後輩に選択させるようにしていたのですが、
気を付けないと抱え込んでしまうので、まずは2、3個の業務から始めました。
私が離席する際には必ず後輩に一声「今はどんな作業をしているの」と聞きます。
後輩は緊張し、手を震わせながらなんとかつかえる声を振り絞り説明しようとします。
私は横に座り後輩の言葉を待ちます。それだけで精一杯頑張ろうとしているんだなと気持ちが伝わります。
うつ病に悩んでいる方を支えるのは、治療も必要ですが、
うつ病であっても働ける職場環境や周りの理解も同じくらい必要だと思います。