「仕事が原因でうつ病になった」
と社員が主張した場合、労災と認められることはあるのでしょうか。
うつ病などのメンタルヘルス疾患は、事故による怪我とは違って、
業務上の理由によるものかの判断が難しいと言われますが、
長時間の残業などの過重労働があった場合は、
業務上の病気として、労災が認められるケースも最近は増えてきました。
厚生労働省の統計によると、心の病で労災を申請する人の数は、
1998年と2005年を比べると、15倍以上にも増加しているといいます。
実際に認定を受けた件数も30倍以上になっています。
業務上の病気だと認められると、
健康保険よりも手厚い、労災保険の給付を受けることができます。
さらに会社側に重大な過失があると認められた場合だと、
会社には、労災保険の給付を超えて、損害賠償の責任が求められることもあります。
労災の認定基準
労働災害の判断指針は、3つの要因から判断します。
その3つとは、「業務による心理的負荷」・「業務以外の心理的負荷」・「固体側要因」です。
業務による心理的負荷とは、うつ病になる前の6ヶ月の間に、
発病にかかわったと考えられる業務について、
客観的に見て、心理的負荷の強度がどの程度だったかが評価されます。
業務以外の心理的負荷とは、夫婦など家庭の問題、金銭、健康などの
業務以外のトラブルや悩みが原因となっていないかどうかが評価されます。
固体側要因とは、うつ病の既往歴、社会にうまく適応できているか、
本人がうつ病になりやすいと言えるかが評価されます。
労災認定請求の処理にあたっては、この3つの要因について具体的に検討し、
それらと労働者の発病との関連性について総合的に判断されることになります。
業務上の負担が強く、それ以外の原因が考えられない場合は、労災認定の対象になります。
会社への打撃
社員がうつ病になると、経済的損失のみならず、様々なデメリットを生むことになります。
例えば、生産性の低下が考えられます。
社員がうつ病になると、些細な仕事のミスが増え、仕事の能率が低下し、
遅刻などの出勤不良を経て、長期間の休職に至ることになります。
職場は、代わりの社員の確保や、遅れた仕事のフォローに追われ、
周りの社員の仕事にも影響を及ぼすことになります。
さらに、うつ病の発症が多い年齢層は、30代の働き盛り世代です。
大切な仕事をまかされている彼らが現場から離脱し、
会社の生産性が低下することに繋がってしまいます。
そしてもう一つ、大きなデメリットとして、
万が一、「うつ病の問題」が訴訟にまで発展し、マスコミに取り上げられでもしたら、
会社の信頼を失い、大きなイメージダウンを招くことにもなります。