うつ病の方と言っても、治療の段階により、さまざまな症状の方がいます。
うつ病初期の方は何に対してもやる気が起こらず、
生きるだけ、極端に言うと呼吸するだけで精いっぱいです。
そして、自分を責める気持ちや自分を否定する気持ちが、
その方たちの中では渦巻いていて、とにかくつらいのです。
このつらさはおそらく、経験してみないと分からないものなのですが、
自分を肯定する思いが少しも湧き上がらず、ひたすらに自分を責め続けてしまいます。
これは自分で自分を殺しているようなものです。
そのようなときに、周りから否定されてしまうと、
ますます「自分は生きていてはいけないのだ、迷惑をかけるだけだ。自分が生きている価値なんてない」
と、自分を責める気持ちが強まってしまいます。
ただ、少しずつ治ってくると単純に喜べるのかと言うと、
実は、少し治ってきた頃が最も自殺する恐れが高いのです。
それは、薬物による治療や療養により気力が少しずつ戻ってきて、
「自殺する気力」までわいてきてしまうためなのです。
そのため、周りから見て、少し良くなってきたなと思える頃も、
油断することなく患者さんをしっかり見守ってあげてください。
そして変わらず、その方を否定しないであげてください。
「あなたがいてくれることで私は助かっている」
「あなたがいてくれてうれしい、ありがとう」
という思いを、積極的に患者さんに伝えてあげてください。
おそらく症状がひどい頃には、そういった言葉をかけても、
患者さんから反応は返ってこないことと思います。
しかしそれらの言葉は、無意識下でも患者さんに届いていて、その方が生きる力になっています。
うつ病の難しいところは、だいぶ良くなってきたと患者さんご本人が思えるようになっても、
少し活動するだけで疲れてしまったり、予想外の体調不良により予定通りに動けなかったりすることです。
これらのことから、うつ病の方が仕事に完全に復帰することは案外難しいのです。
ですので、まずはうつ病の方が働くということは想像以上にご本人にとって大変なことであり、
ご本人は相当に頑張っていること、予定通りに動けなくても
それは仕方のないことなのだということを受け入れてください。
その上で、少しずつ、うつ病の方ができそうな作業を提案してみたり、
ご本人の希望を聞いて、無理のなさそうなものであればそれをサポートしたりという、
バックアップ体制を取ってあげてください。
周りの方がうつ病の方を温かく受け入れることで、
ご本人も自分のできることから少しずつ、仕事に復帰できるようになります。
ただし、患者さんが無理をしすぎないように気をつけてあげてください。