以前に菓子卸問屋の営業をしていた頃の話ですが、
同期入社で私よりは一つ歳上の同僚がいました。
私も同僚も中途採用で、入社した時期が一緒で、すぐに話もあう気心も知れた感じで、
意気投合して、家族ぐるみで仲良くなりました。
暫くは、同じ営業所内で勤務していたのですが、本採用になった時に、
私は、本社勤務に配属され、彼はそのままそこの営業所勤務に配属されました。
管轄地域が異なり、彼とは月一回の、本社での営業会議で顔を会わすぐらいで、
後は電話やラインでやりとりしていました。
お互いに担当の持ち場や、新規開拓業務で多忙を極め、1年ぐらいプライベートの付き合いがなくなりました。
特に彼は、営業面での成績は抜群で、業績はグングンうなぎ登りで、
わずか2年でそこの会社のトップの営業成績を残しました。
創業以来初の快挙らしく、会長から営業車として、ベンツが与えられました。
彼は、鼻息荒く更に、業績を上げようと頑張りましたが、
ベンツで営業に来るスタイルが、得意先からあまりいい印象を与えず、
彼の成績は少しずつ下降線を辿りました。
その頃、私は地味ながら、マメに得意先に足を運んで、
じわじわと営業成績が、上昇の兆しを見せてました。
彼から、久しぶりに飲みの誘いがあり、週末に二人で飲みました。
その頃から彼は、去年までの自分と現在の自分が、まるで別人だと悩んでいましたが、
私は、彼には彼らしく、仕事に緩急をつければとアドバイスしました。
それから数日して、彼の奥さんから会社に、彼が家で倒れたと連絡がありました。
私はその日のうちに、仕事を終えて、彼の家に駆けつけたのですが、
奥さんが出てきて、誰にも会いたくない事だけを告げられました。
彼は、仕事に対するプレッシャーで、ノイローゼになり、医師の診断ではうつ病と言う事でした。
彼は、それからは精神病院に通院し、カウンセリングを受けながら、1年ほど月日が流れました。
ある日、彼の奥さんから連絡があり、私に会いたいと言われました。
その日の夕方に彼の家に出向き、彼を見た瞬間、まるで別人のように変わり果てていました。
容姿は変わらないのですが、視線を会わせず、挙動不審にモゾモゾと喋るのです。
奥さんが言うには、彼は会社に戻りたいらしいのですが、
以前のような働きが出来ないと不安がっているそうです。
私は会社の社長に頼んで、私と同じ営業所にしてもらい、
彼には内勤の倉庫作業から、リハビリがてら、短時間働いてもらうようにしました。
倉庫のパートさんや、他の社員の方には、彼に明るく話かけるように言いました。
復帰してすぐの頃は、1時間ぐらいで気分が悪いと言って帰りましたが、
徐々に生活に慣れ、他の人に対して、自分から話すぐらいまで回復しました。
私は、昨年に会社を退社しましたが、彼の事は気になってちょくちょく連絡は取っています。
一度、うつ病になるとなかなか立ち直れない事は、彼は言っていました。
また、以前の彼に戻って欲しいと思う今日この頃です。