うつ病の人にどう接すればいいか。
これは、経験者でなければなかなか分からないことだと思います。
私の場合、4年前に、職場の部下の男性が、うつ病になってしまいました。
大学を出て、5年目の彼はだれよりもバリバリ働き、業績をあげる頼もしい人でした。
社内でも何回も表彰され、社内行事で活動報告をし、あまりに仕事ができるため、
任せる仕事も増えていき、さらには、別の関連部署との役職の兼務も社長命令で行うことになりました。
結婚もして、さあ、いよいよこれから、新たな人生の局面に、という段階に至ったとき、
突然、彼を運命の波が襲いました。
朝、起きられなくなり、午後から出勤する日が増えていきました。
そのうち、全日欠勤するように。
私は、彼が頑張りすぎて疲れたのだと思い、上司と何度も彼の家を訪問し、
「みんなが君のことを待っている」「元気を出して、再び社内の星と輝いてね」と励まし続けました。
他の同僚たちも彼を励ましました。
しかし、そのうち、彼の体調は悪化。
やがて「死にたい」と口走るようになりました。
体もやせ細っていき、目は落ちくぼんで別人のように変わり果てました。
そこで私は、高校時代の同級生で、心療内科の医院を開業している人にアドバイスを受けました。
彼が言ったことは次の通りでした。
1.励ましてはいけない
とにかく、元気のない相手に対して「頑張れ」「勇気を出せ」と励ましがちですが、これは逆効果になる。
2.苦しみを分かってあげる
苦しみを和らげようと「もっと苦しんでいる人は他にたくさんいる」などと言ってしまいがち。
本人の苦しみをどこまでも分かろうとしてあげなければならない。
3.存在価値を認めてあげる
「死にたい」と思うぐらいに落ち込んでいる本人に対し、
どれだけ自分は価値ある存在なのかを教えてあげる。
4.人の為の生きる喜びを教える
人間は、他人のために生きようとしたとき、とてつもない力を発揮できる。
「他人のため」という意識が働いたとき、病状は良くなる。
5.待ちの姿勢を見せる
本人は、いつまでも苦しい状態が続くと思っている。
しかし、「必ず治る」という希望を与え、それまでずっと待ち続けるという姿勢を見せる。
以上のことを肝に銘じ、その通りに実践し、彼の仲間たちもそのようにしていきました。
そうしたところ、彼は少しずつ、薄紙を剥ぐように病状を好転させていったのです。
そして、4年間の病気の期間を経て、昨年秋から出社するようになりました。
仕事内容は、以前のようなハードなものは与えず、やりがいのある社内で済ませられるものを与えています。
そして、「以前の部署に戻りたければ、いつか戻してやる。戻らなくてもよい。
1年後、10年後のことは考えず、きょう一日、一瞬一瞬を、共に生き切ろう」
と言ってあげています。
今では、彼の顔に明るさが戻り、以前のように、仲間と冗談も言い合える状態になっています。