希死念慮とともに歩むということ

病歴8年の当事者です。

乳児育児のさなかに義両親の金銭問題に巻き込まれ、重なったストレスでうつを発症しました。

2度の入院を経て、現在は投薬による治療で大うつを脱して小康を保っています。

不眠と過眠を繰り返し、起き上がることも出来ないような倦怠感と、

仕事も家事も出来ない自分の無価値を責めて苦しむ日々は今も続いています。

 

「希死念慮」という言葉をご存知かと思います。

うつ患者の「死にたい」という衝動には必ずしも深刻な根拠はありません。

生きたいという気持ちの裏返しであるとも言われておりますが、

どんなに望んでも死ねないから生きているだけです。

腕さえ上げることがつらい鉛のような身体を抱えて、

大きな石を飲み込んだような気分の低迷の中で考えることは

「死にたい」「消えてしまいたい」それだけです。

 

事実、薬の効果などで身体的な症状が軽くなった途端に所謂「死に支度」を始める方は珍しくないのです。

最悪、僅かに取り戻した気力体力をそのまま自殺への足掛かりにしてしまう悲しい事例も後を絶ちません。

 

そのように、ひたすら「死にたい」という感情に追い詰められている当事者に

掛ける言葉を選ぶことは容易ではありません。

死を希求する苦しみに対して「残されたご家族の悲しみを考えて」と頂いた助言さえ心に響かないのです。

ただ、ままならない身体と地底を這うような心を捨ててしまいたい。

健常者だけでなく、当事者同士でも埋めることの難しい壁が存在します。

 

こう言ってしまうと、うつ患者とコミュニケーションを取ることは

腫れ物に触るようなものだと尻込みされる方もおられるでしょう。

悲しいことですが、うつを罹患してしまったが為に離れていった友人知人は少なくありません。

では、うつで苦しんでいるご家族やご友人とどう向き合って行けば良いのでしょうか。

 

うつを抱えた人が一番恐れていることは、「怠けているのではないか」と思われることです。

うつの身体症状は個人差があり、その多くが日常生活を困難にさせるほど深刻です。

そして、その動けない身体の為に自分の身の回りの世話から始まる人間としての活動の停止を余儀なくされ、

患者はますます自信を失い自己否定感を強く感じるようになります。

人としての尊厳を感じられなくなるのです。

 

うつに罹患した主婦の女性が家事を滞らせていたことに対して、

夫が放った「これくらいのことも出来ないのか」というたった一言が、女性を自殺へ追い込んだ例もあります。

 

また、毎日起き上がることも出来ずベッドの中だけで生活している方が、

たまたま朝起きてコーヒーを飲めたとします。

ものすごい進歩です。

しかし翌日も同じ行動が出来るとは限りません。

その時に「昨日は出来たではないか」と期待を押し付けることも患者を追い詰めます。

 

では、うつ患者が他者に求めていることはなんでしょうか。

「大丈夫?」と尋ねられれば、私は心身がどんなに酷い状態であっても「大丈夫だよ」と答えてしまいます。

病気に対して理解が深く絆の強い家族であれば、正直な心身のつらさを訴えることができますが、

友人知人にそれをしても相手を困らせるだけだと理解しているからです。

 

もし、病者に寄り添いたいという気持ちが少しでもおありなら、

あなたの目に映った通りの言葉を掛けてみて下さい。

「駄目っぽい?」「つらそうだね」。

それでいいのです。

「つらい」と言われたら「つらいのかー」と返して下さい。

うつ病を含めて私は私です。良い時も悪い時も、共感を持って接してくれる方に救われています。

 

うつ病の患者は、社会的な理解が不足している中で孤独な戦いを強いられています。

親身になってくれとは言いません。

病気であることをさらっと流して「どんな状態でもあなたはあなただよ」

と耳を傾けて貰えるのが一番嬉しいです。

 

興味があるならば病気そのものや、そこに至るまでの経緯・環境を尋ねてくれても構いません。

話せるところまでは話します。

そこから先は話したくないことです。

決して詮索しないで下さい。

もし「死にたい」と言われたら、「そうだね、つらいね」と声を掛けて気持ちに寄り添い、

一人でないことを伝えて下さい。

手を握ったり、可能ならば抱きしめてあげて下さい。

 

死を渇望するほどの絶望は、とても人一人で背負い切れるものではありません。

心身の重篤な不調の為に、差し出された温かい手を素直に握ることが出来ない方もおられるでしょう。

無理に笑顔を引き出す必要はありません。

ただ、離れないと言うことを信じさせて下さい。

次の季節に咲く花の香りを、一緒に楽しみにしてくれる方と私はともにありたいです。


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